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小枝先生の医学史探訪(第3回)- 優しい外科医パレ –

2017.7.14

スタッフブログ

こんにちは、教員の小枝です。 今回の医学史探訪第3弾は外科医アンブロワーズ・パレの登場です。 パレは、1510年フランスのブルターニュ出身で、身分の低い「理髪外科医」から身を起こし、やがてヨーロッパ最高の医師となった外科医です。 Ambroise_Paré ↑ アンブロワーズ・パレの肖像画。Wikipediaより引用。 若き日のパレは、パリに出て理髪外科医に弟子入りし修行に励み、その後、パリ最古の病院で住み込み医として働き腕をみがいた。 そして、その腕をかわれフランス軍の部隊の軍医として配属されたのです。 この頃、銃創によるケガの治療法は、イタリアで確立された「銃創では火薬の中毒が起こるので烙鉄または熱した油をもって傷口を消毒する」治療法が基本であった。 しかしその結果、ケガ人は治るどころかますます重篤な事態に陥っていたのだ。 パレもはじめは、その基本を忠実に受け入れていた。そんなある日、問題が起こった。 治療用の油を使い切ってしまったのである。そこでパレは決心した。 熱した油の消毒をやめて「卵黄、バラ油、テレピン油」を混ぜて軟膏を作り傷口にぬり、その上から優しく包帯を巻いたのである。 しかし、パレの心は不安に満ちていた。「明日になれば火薬の毒のせいでケガ人たちはみんな死んでしまうのではないのか?そうなれば私は、人殺しだ…。」パレはまんじりともせずその夜を過ごした。 翌朝、パレは信じられない光景を見た。ケガ人たちはみな、今までの治療では考えられないほどに回復していたのだ! パレは、今まで教えられてきた知識が根拠のない誤りであったことに気づいたのである。 そして、もう二度と残酷な煮え油を使うことはなかった! 優しい外科医パレ誕生の瞬間である!! その後も、パレは四肢の切断手術に血管の断端を糸でくくる「血管結紮法」を戦場で初めて行なった。 血管の断端を糸でくくれば確実に止血ができる。 このような理屈は現代では常識であるが、16世紀の外科学においては、まったく斬新な考えだったのである。 それらは外科の大きな進歩であった。 パレは常に「患者の負担を最低限におさえる」愛護的な精神を忘れなかった。 「われは包帯するのみ、神が癒したもう」これは、パレの残した有名な言葉です。 参考文献:医学の歴史(小川鼎三 著/中公新書)、まんが医学の歴史(茨木保 著/医学書院)

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