小枝先生の医学史探訪(第2回)
カテゴリー:スタッフブログ 更新日:2017.05.31
こんにちは、教員の小枝です。
いよいよ待ちに待った一部のマニアックなファン待望の医学史探訪第2弾です。
今回は中世ヨーロッパの解剖学者ヴェサリウスの登場です。
ヴェサリウスの肖像画(Wikipediaより参照)
1543年、種子島に漂着したポルトガル商船が、わが国に鉄砲を伝えた!
この同じ年に西洋では2冊の歴史的な書物が出版された。1冊はコペルニクスの主著「天体の回転について」、もう1冊はヴェサリウスが主著の人体解剖学書「ファブリカ」である。
キリスト教が支配する中世ヨーロッパでは、「教会は血を忌む」との教えから大学の解剖学講義で解剖学の教授みずから解剖を行うことはなかった。
代わりに解剖学書を朗読するだけであった。
既存の解剖学書に書かれている記述よりも自分の目で見た事実を信じたい。
また、それこそが解剖学の発展につながることを解剖学教授に就任したヴェサリウスは感じていた!
教授みずから解剖を行い講義する、ヴェサリウスの斬新な解剖学講義は大評判となった。
そして当時の医学書に書かれていた人体構造が、現実とは異なることを次第に明らかにしていった。
周りからの後押しもあり、今までの経験を凝縮した本格的な解剖学書の作成にとりかかった。
ヴェサリウスの素晴らしいところはビジュアルのイメージがいかに人間の理解を深めるかを心得ていたことである。
みずから腕のよい画家、彫版師、印刷所まで選び事細かく指示を与え完成したのが、ダイナミックな構図と正確なデッサンで描かれた芸術的な解剖図。
それが医学界の常識を根底からくつがえした人体解剖学書「ファブリカ」です!
参考文献(医学の歴史:小川鼎三 著:中公新書、まんが医学の歴史:茨木保 著:医学書イン)